世界遺産で、世界七不思議の一つに数えられるエジプトの大ピラミッド。
それは、何のために、また、どうやって建造されたのか。
ネコとピラミッド大好きの管理人が、その謎に挑みます。
ありきたりの話ではなく、自称、新説! を展開しています。
旅行でエジプトのピラミッドを見たことのある人は結構多いのではないかと思います。いろいろな知識があると、同じ世界遺産を見ても受ける印象が全く変わってきます。
クフ王のピラミッドの謎の解明に挑戦
「世界遺産」といったら、何といってもエジプトのクフ王のピラミッド。
子どもの頃から憧れていた夢のような古代遺跡、それがギザの三大ピラミッド。
クフ王のピラミッドは、「いつ」、「何のために」、「どのようにして」 造られたか、分らないことがさらに神秘性に拍車をかけています。
一般に、ギザにある最も大きなピラミッドは第1ピラミッド、大ピラミッドまたはクフ王のピラミッドと呼ばれていますが、クフ王が建造したという確たる証拠はない。(「注」参照)
ピラミッド内部の玄室(と呼ばれている)の上部に重量軽減の間、という空間がありますが、そこに落書きのように「クフ」と読める文字が記載されていたこと、およびスフィンクスの両手の所にある碑文に記載されていた文章が根拠となっています。しかし、信憑性が薄く、真偽は定かではない。これは新たな発見がなされない限り永遠の謎になりそうです。
古代エジプトのヒエログリフ(聖刻文字)が解読された結果、クフ王の年代が分かりました。今から約4,500年前です。しかし、大ピラミッドがこの時期に建造されたという根拠にはなっていない。
日本で抱いていた大ピラミッドのイメージと実際に見たイメージとの差異が、読者の参考になると思うので、その点に重点を置いて、大ピラミッドの謎について書くことにします(ネコ師の独断です)。
【追記します(2015.10.23)】
(注:この記事を書いた当時は証拠がなかったのですが、2014年にクフ王のピラミッドを建造した作業員の日記が見つかるなど、クフ王が大ピラミッドを建造したということはもはや揺らぎない事実として定着しています。)
1.大ピラミッドは墳墓ではない!
(1) ピラミッド内部の壁面
ピラミッドの内部に入って気づくのは、装飾が一切施されていないということ。このような王墓があり得るだろうか。装飾を削って剥がしたような跡も一切見えない。
大回廊といわれる全長48mの巨大な通路がありますが、その天井はせり出し構造になっていて、上方にいくほど徐々に狭くなってゆく。この回廊の幅は2.1m、高さは8.5mもある。回廊自体が26度の急傾斜路になっているため、天井はさらに高く感じる。この急傾斜の側壁から、壁画などの装飾を跡形もなく除去することは不可能に思える。つまり、装飾など、最初からなかったのだ。
大ピラミッドの内部で装飾を施すとしたら、大回廊が最適の場所です。そこに痕跡が見られないということは、装飾を施す必要のない「構造物」だったのではないでしょうか。
未完成で、後から装飾する予定だった、ということもあり得ない。装飾するのであれば、壁を積み上げる時点で施されていなければならない。せり出し構造で徐々に天井が閉じていき、周囲の石が積み上がってくると、大回廊は完全に閉ざされた空間になる。その中で、粉塵が飛び散る装飾作業や、多くの石工が作業することは不可能であると考えられる(現在、ピラミッドには換気施設が整備されていますが、それでもピラミッド内部の空気が汚れるため、1日の入場者数を制限しているくらいです)。
つまり、装飾は、事前に加工したものはめ込むか、あるいは、天井が閉じる前に終わらせておかなければならない。
このことは、非常に重要なことであり、大ピラミッドは王の墓所ではないことを示しています。
(2) 玄室内部の石棺の配置
王の玄室と呼ばれているにもかかわらず、石棺の位置は部屋の隅に置かれている。このような配置は、非常に不自然です。このことを誰も指摘していないことがとても不思議です。
これの何が問題か分かりますか?
この配置だと、石棺を覆う厨子が入らないのです。
また、石棺は既存の写真でもご承知の通り壊れています。しかし、その壊れ方が異常です。割れ口がツルツルに磨かれたようになっている。たとえ、多くの訪問者があり、手で触ったために磨かれたようになったとしても、あれほど"均一"に磨かれることはあり得るのだろうか。もし、そうであるならば、石棺の縁は全てツルツルになっていてもおかしくない。しかし、ツルツルに磨かれたようになっているのは、破損した部分だけです。
2.ピラミッドの建造方法の謎
ピラミッドの建造中の絵としてよく見かけるのが、回廊式の仮設道路をピラミッドの外壁に沿って渦巻き状に造り、石材を運び上げているものである。一見、もっともらしいが、実際には無理がある。
ピラミッドの建設当時の推定高さは146.7m、底辺の長さは230m、斜面角度は51度52分である。この角度は非常に急角度であり、回廊式の仮設道路はこの斜面には取り付けることはできない。
安息角というのをご存じだろうか。さらさらの砂を上から静かに落としたとき、砂の山ができるが、その砂山の角度は砂の量に関係なく一定である。一般に、砂の安息角は30度程度と言われている。
ピラミッドの周囲に無尽蔵にある砂を仮設道路の路盤材として用いたことは想像に難くないが、この材料では、ピラミッドの斜面に回廊状の道路は造れない。図を書いてみればすぐ分かる。
このピラミッド斜面の角度は想像以上に急である。仮設道路の側方法面をレンガで補強したとしても、重量物を運搬する道路としてはとても使えない。
3.では、どうやって石を積み上げたのか。
私は、現場を見て、直斜路を使ったのだろうと思いました。まっすぐな道路です。
仮に9%の仮設道路をピラミッドの頂上まで取り付けようとすると、道路の水平距離は1630mになります。当然、建造途中はもっと短くできます。
9%とは、100m行って、9m上がる道路の角度です。実際、9%は人力による石材運搬にはちょっときつい角度なので、もう少し緩やかだったと思います。しかし、これもピラミッド頂上のレベルの話なので、大量の石材を要する下部はもっと緩やかで、さらに四方から築造道路が取り付けられていたと考えられます。 取り付け道は、ナイル河から運搬した石材の集積場の位置との関係上、1本と考えられているようですが、ピラミッド下部の石積みでは、ピラミッド周辺で分岐するもっと多くの道路が造られたと考えるのが妥当でしょう。
道路の水平距離については、これより短くても施工できます。途中までは直斜路で造り、ピラミッドの近くになったらピラミッドに沿うように道路を回り込ませる。これにより、道路の延長距離が増え、道路勾配を緩やかにできる(結果的には道路延長は長くなりますが、直線距離は短くなります)。
また、石積みの作業段階にあわせて、この回り込み道路は、首を振るように付け替えられて、徐々に高くなってゆく。この方法は、フィルダム建設で通常使われている方法であり、別に目新しいものではありません。ピラミッド研究に関わる人たちが知らないだけです。(絵があればわかりやすいのですが。)
推理小説で、重い機関車をどうやって動かしたかが事件解決の焦点になっているものがあります。結論は、線路のレールを移動する、というものです。重い機関車は人間が何人いても持ち上げることはできないが、レールならば人の手で動かすことができ、その結果、重い機関車を動かすことができるというものです。
仮設の考え方も同じです。仮設は、構造物が出来上がった時点ですべて取り払われます。そのため、構造物だけをみると、「どうやって造ったのだろう」と疑問が湧きます。
ピラミッドの周囲に無尽蔵にある砂を直斜路の路盤材に使用するのであれば、ピラミッド完成後の撤去も容易です。仕事量は力と運搬距離の積で決まります(仕事(J)=力(N)×移動距離(m))。砂のように運搬が容易(大型石材と比べ、いくらでも作業を細分化できる)で、周囲ですぐ手に入る材料(移動距離はほとんどゼロ)を使うのは当然でしょう。そして、たとえ道路建設に膨大な量の砂が必要であったとしても、その仕事量は、それほど大したことはない、ということが、上式から理解できると思います。距離が圧倒的に短いため、仕事量が最小化できるのです。
4.大林組の挑戦
大林組が1978年に現在の技術でピラミッドを作るとしたらどのくらいのコストがかかるかというプロジェクトを実施したことがあります。よくぞやったと賞賛したい。
当時の試算では総工費1250億円、工期5年、最盛期の従業者人数3500人という計算結果となりました。これは、「現在(1978年時点)の技術で」という前提に基づく計算です。ピラミッド建造当時の技術、労働者条件等を考慮したものではありません。
このため、大林組の仮設道路計画と私が考えた計画とは違っています。大林組の仮設は、高さ60mまでは直斜路で、それより上はエレベータおよびクレーンで持ち上げるというものです。この仮設計画はちょっとパフォーマンスだと思われるのですが。 実際に大林組が工事を受注し、工期の制約がなければ、エレベータではなく、迂回斜路(通称、つっこみ道路)方式を使うのではないでしょうか。
5.キャップストーンの設置方法の謎
最後にピラミッドの頂上に設置するのが「キャップストーン」と呼ばれる四角錘の石です。
キャップストーンの設置方法については、さまざまな推論が出されていますが、すべて根拠のないものばかりのようです。
ピラミッド建設では、上に行けば行くほど作業スペースがなくなるため、キャップストーンをどうやって設置したのかが大きな謎となっています。
大林組が実施したプロジェクトの施工計画では、ヘリコプターを使ってキャップストーンを持ち上げ設置することになっています。しかし、上述したように、砂を使えば、こんなことをしなくとも簡単に設置することができます。別に謎でもなんでもない。
6.石材の運搬方法
一般に言われているのは、石材の下に丸太を敷き、コロとして使って運搬したというもの。別の仮説は、石灰で漆喰状に路面をなめらかにし、水を流しながら、滑らせて運んだというもの。大体、この2つ仮説が主流のようです。この「滑らせる」という発想は、個人的には大好きです。
管理人は、数百トンの岩を移動した経験があります。これには、通常は巨大なクレーンが必要となりますが、そのようなものは使わず、通常のブルを使いました。雪の上を滑らせたのです。
7.果たして、この2つの方法だけなのか?
以前、日本テレビで、石材の運搬を実証する特番を放映しました。この番組では、「遺跡から発掘された木材片を組み合わせたら、車輪のようになった。そこで、石材をこの車輪に組み込み運んだのではないか」という仮説を立て、実際に石材の外側を木材の車輪枠で囲み、「転がして」運ぶ実験をしていました。
これには目から鱗が落ちる思いがしました。しかし、その後、この方式は省みられておらず、不思議なことに忘れ去られています。石材を引きずったのではなく、石材そのものを転がして運んだと考えた方が納得がゆくのですが。摩擦抵抗が全く違います。
ただし、この仮説には欠点があります。それは、ピラミッドで使われている石材の寸法がバラバラだという事実です。サイズが異なる石材を転がして運搬するためには、車輪枠が相当の数必要となります。しかし、致命的な欠点ではないであろう。巨大な石材運搬に必要な労力を考えれば、車輪枠を石材のサイズ毎に作ったとしても、何らおかしいことはない。 それよりも、車輪枠は使い回しはできないので、一度きりの使用となります。すると大量の木材が必要ですが、その入手の方が大変そうです。
この記事は、ネコ師の仕事上の知識と実際に現地を見て感じたことに基づき書いています。このような視点で書いたものは私の知る限りありません。
機会がありましたら、この続編を書きたいと思います。
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↓ これ作ってみました
ピラミッド関連過去記事
この記事の続編です。
クフ王の玄室はピラミッドの地下か?
世界遺産 大ピラミッド建造の謎の解明に挑む【追記します】(2010/8/29)
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不思議なことが大好きな方は、カテゴリー「なぞの解明」で、他の世界の不思議を見ることができます。
「ピラミッド建造方法」と入れてグーグルで検索してて、たまたま今頃、こちらの記事にと辿り着きました。
ネコ師さんというお名前は何処かで見たことがある…と思って確認してみたら、poyoさんの「ウーダン説解説記事」のコメント欄で最初にコメントされてた方だった…と分かりました。
このページからのリンク先の「追記します」を今読んで、私よりも前に「内部トンネル仮説」の色々な欠陥を既に指摘されてた事に気付きました。
( 私が「内部トンネル仮説」と袂を分かったのは漸く2017.12.9.でした。)
私はウーダン説をテレビで知って初めてピラミッドの建造法に関心を持ち、2009.7.5.からメモを書きつつ考え始めたものの紆余曲折した思考過程そのままの記事を漸く公開出来たのは結局7年後の2016.2.12.でした。
『 巨大ピラミッドを建造するいちばん簡単な方法 』というのが私のページです。リンクにも入れましたが一応URLは
http://www.geocities.jp/netreal_bookbox/utzugi/OpenLetters_014.htm
です。思考過程を省略しての要約版は
http://www.geocities.jp/netreal_bookbox/utzugi/OpenLetters_017.htm
に置いてあります。
木製ヤグラ上で垂直に掛ける建設作業者の体重だけを主要運搬動力として活用する点と、「ピラミッド表面の化粧石形成」以前の外部切り通し斜路という無駄の一切生じない斜路である点、玄室周りの最大135トンの花崗岩までもを総てクレードルで車輪化して運び上げ可能な巾広斜路が一段毎に仮設されたとする点、等に一応の新規性があるとは思っております。
是非一度、ご来訪下さい。
大ピラミッドの謎については何度も様々な角度から記事を書いているので、どの内容をどこに書いたのか覚えていないのですが、記事を書く内に、考えがだんだん固まってきたように思います。
最新の記事は、「なんでも保管庫2」に書いています。サイト上部のサイトマップから「ピラミッド」で検索すると関連する記事にたどり着けると思います。3件ばかりあります。よろしかったらご覧ください。
うつぎさんの記事は以前から拝見しておりました。コメントを頂けとてもうれしいです。
>うつぎれいさん
>
>初めまして。うつぎれいと申します。
>
>「ピラミッド建造方法」と入れてグーグルで検索してて、たまたま今頃、こちらの記事にと辿り着きました。
>ネコ師さんというお名前は何処かで見たことがある…と思って確認してみたら、poyoさんの「ウーダン説解説記事」のコメント欄で最初にコメントされてた方だった…と分かりました。
>
>このページからのリンク先の「追記します」を今読んで、私よりも前に「内部トンネル仮説」の色々な欠陥を既に指摘されてた事に気付きました。
>( 私が「内部トンネル仮説」と袂を分かったのは漸く2017.12.9.でした。)
>
>私はウーダン説をテレビで知って初めてピラミッドの建造法に関心を持ち、2009.7.5.からメモを書きつつ考え始めたものの紆余曲折した思考過程そのままの記事を漸く公開出来たのは結局7年後の2016.2.12.でした。
>
>『 巨大ピラミッドを建造するいちばん簡単な方法 』というのが私のページです。リンクにも入れましたが一応URLは
>http://www.geocities.jp/netreal_bookbox/utzugi/OpenLetters_014.htm
>です。思考過程を省略しての要約版は
>http://www.geocities.jp/netreal_bookbox/utzugi/OpenLetters_017.htm
>に置いてあります。
>
>木製ヤグラ上で垂直に掛ける建設作業者の体重だけを主要運搬動力として活用する点と、「ピラミッド表面の化粧石形成」以前の外部切り通し斜路という無駄の一切生じない斜路である点、玄室周りの最大135トンの花崗岩までもを総てクレードルで車輪化して運び上げ可能な巾広斜路が一段毎に仮設されたとする点、等に一応の新規性があるとは思っております。
>
>是非一度、ご来訪下さい。
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