今朝、2年間住んだスクレから旅立ちました。いろいろ思い出深い街でしたが、今は、日本に帰れるのでうれしいです。
今日はラパスに滞在し、明日、ボリビアから離れ帰国します。
ところで、小耳にはさんだ情報ですが、昨日、ラパスのユンガスというところで、日本人観光客が崖から転落して亡くなったそうです。心よりお悔やみ申し上げます。
ユンガスは、ラパスから低地に降りる難所で、年間100人以上が転落死している危険な場所です。数年前、世界銀行の協力で新しい道ができたのですが、現地の旅行社がマウンテンバイクによるツアーを企画していて、亡くなった方は、危険な旧道をマウンテンバイクで駆け下りるツアーに参加して今回の事故に遭われたようです。
ネコ師は行ったことがないし、それに匹敵する危険な道路をいくつも通っているので、そのようなツアーには決して参加しません。
個人的に思うのですが、ネットにはたくさんの情報がありますし、地球の歩き方のような情報誌もあります。ただ、記事を投稿されている方は、海外旅行に全くの素人ではなく、安全についての研修を受けたり、言葉もでき、情報収集能力もあったりと、一般の観光客の方とは違うのではないかと思います。安全情報と言えば、スリや強盗被害のことが真っ先に頭に浮かぶのではないでしょうか。ところが、これだけではありません。
ボリビア観光は、事故や事件に遭うリスクが他国よりも遙かに高いと思います。これについては、このブログで何度も書いています。
ネットの観光記事には、安全についての記述はほとんどありません。バス代が安いとか、こちらの旅行社がしっかりしているとか、そんなレベルです。ボリビアの道路封鎖の怖さもどこにも書かれていません。強行突破しようとすれば殺されてしまいます。
事故に遭わなかったのが、たまたま運がよかったのか、事故にあったのがたまたま運が悪かったのか。それは、国によって違います。でもボリビアの場合は、事故に遭わないのはたまたま運が良かったと思えるほど、事故が多発しています。
今回の転落事故では、被害者の方は200mくらい転落されたようです。でも、ネコ師が仕事をしていた場所は、もし落ちれば500mも転落する場所で、道路の路肩は「どこが路肩」と思える状態で、最初通ったときは、生きた心地がしませんでした。道路沿いにたくさん建っている犠牲者のための祠(ほこら)の意味を実感しました。雨が降った後はとても危険で、道路が雨で浸食されるため、タイヤの幅がやっと確保できる程度の所もたくさんあります。しかし、それは道路表面の話で、道路の下側が侵食され空洞になっている可能性もあります。転落すれば奈落の底まで一直線。途中に遮るものは何もありません。「生きて日本に帰れるんだろうか」と、まじめに考えました。
こんなことを書いても、日本にいてボリビア観光を計画されている方にはあまり実感がわかないかも知れません。そこで、日本との違いを少しまとめて書くことにします。
1.長距離バスは危険
ボリビア国内の移動方法には長距離バスがあります。ラパス-スクレが13時間、サンタクルス-スクレが15時間くらいだったと思いますが、実際にはもっとかかります。その長距離バスの事故が頻発していて、一度に数十人の方が亡くなっています。ネコ師の周りのボリビア人にも、事故で両親を亡くしたという人がいました。ボリビアではバスの事故で身内を亡くするのは身近なことです。
2.ツアーも一部危険
ボリビアには6,000m級の山がいくつかありますし、4,000m級の標高の土地は生活圏内です。6,000m級の山は、そもそも一般の観光客が簡単に登れるところではありません。6,000m級の山で、事故で亡くなった人の遺体を降ろす作業を手伝った人から聞いた話では、とにかく大変だったと言うことでした。その経費は誰が支払うのでしょう。
危険を伴うアドベンチャー型のツアーは、もっと先進国でチャレンジした方が良いと思います。怪我をしても、満足な治療は受けられません。それでも治療が受けられれば良い方です。ネコ師が車の横転事故にあったときは、田舎なのに病院があったために治療を受けることができました。事故の翌日、首都まで移動することになったのですが、それに要する時間が車で6時間。あちこち打撲していて、むち打ちで首も動かせない状況で、この移動に耐えられるだろうかと心配になりました。別の事故の時は、事故現場から首都に戻るのに3時間。病院に着くまでとても長く感じました。肉体的ダメージだけでなく、精神的ダメージも大きく、回復に1年以上かかりました。
3.道路封鎖は危険
ボリビアの道路封鎖は過激です。なにしろダイナマイトを平気で使います。ダイナマイトは、起爆剤を差し込んだ状態ではとても危険です。知識のない人たちが使えるものではありません。これがボリビアでは日常的に使われています。ちなみに、ダイナマイトは起爆剤がないと爆発しません。パイプ爆弾のように殺傷能力を高めた使い方をしていないのが救いです。密閉しない環境でダイナマイトを爆破させてもそれぼどの威力はありません。
道路封鎖をしている人たちの中に炭鉱労働者のグループがいると特に過激になるようです。
ダイナマイトの他に投石という手段も用いられます。バリケードを突破しようものなら、この投石の嵐に遭遇します。見境なく投石するので、石に当たれば大けがするか、下手すると死んでしまいます。
4.道路が危険
日本の道路は、国の基準に基づいて設計されています。カーブを曲がるときの制限速度は、その速度で設計されているので、その速度で走行していればカーブを安全に曲がれることを示しています。ところが、ボリビアの道路はそのようになっていません。カーブの入り口と出口で曲率半径が大きく違っていて、進入時の速度では、カーブを曲がりきれないことも起こります。カーブをスムーズに曲がるために曲率半径を徐々に変更していく設計手法もありますが、そのようなレベルではなく、地形に合わせた道路造りになっています。このため、初めてその道路を通ったドライバーは、普通の道路と同じ感覚で運転して、カーブを曲がりきれず崖から転落するという事態も発生します。
また、道路の維持管理が十分でないため、道路の路肩の崩壊による転落もよく起きます。
5.その他
長距離バスの運転手が1人しかいない、運転手の飲酒、ドライバーがそもそも交通ルールを知らない、など他の要因もいくつもあります。
くれぐれも、日本の基準で考えないように。
事故や事件に遭遇しても、そんなことは頻発しているので、だれもまじめに対応してくれません。困ったときに助けてもらえると思ったら大間違いです。「自己責任で」という意味は、まさに文字通りで、「後始末まで、自己責任で」ということです。
ボリビア最後の記事がこんな内容になるとは思いもしなかったのですが、今回の事故の話を聞いたので、書くことにしました。
次回の記事は、日本で。
ということは、もう日本へ戻っているんですね。
お帰りなさい!!(^-^)/~~~
う~ん、高山ゆえに整備が行き届かないのか
する気がないのか・・・
人の考えも立地も、ディープな所ですね。
ツアーは経験者向けという感じなのかな?
登山で言うハイカーとアルピニストの違い。という感じ。
そこにハイカーが入っても命を捨てたようなものだし・・
ツアーそのものは完全に自己責任とか。。。
ネコ師さんの書いたツアーでの転落死の話を読んでて
山と重なりました(^^ヾ
ご無沙汰しています。やっと帰国しました。帰国したのも束の間、また、転勤で某県に来ています。
時間ができたらゆっくりと書きたいと思うのですが・・・。