昨日スクレに戻りました。世界遺産の古都キトの記事は後日アップします。キトはすごいの一言です。
さて、2月26日、エクアドルの首都キトから車で40分ほど北、直線距離で26Kmの所にある「赤道」を見に行ってきました。
この場所は「Mitad del Mundo(世界の半分)」と呼ばれている観光名所(博物館)になっています。
この「Mitad del Mundo」と呼ばれる観光場所は2ヶ所あり、一方は本当の赤道から4分ばかり南側にずれているようです。そして、50mほど離れた所にあるもう一方の観光施設は正確に測定した赤道上にあり、そこでは「赤道マジック」とも呼べる興味深い物理現象を見ることができます。
今日はこの二つの観光名所をご紹介します。はっきり言って「感動します」。
下の画像で、下部にキト、上部にMita del Mundo が表示されています。
【Google Earth用緯度経度】
0° 0'7.81"S 78°27'20.76"W
民族学博物館:Museo Etnográfico
まずは、民族学博物館の方からご案内します。赤道から少しだけズレたところに建設されている博物館です。
広大な敷地の中央に巨大な塔がそびえ立ち、その頂上には地球が据えられています。
入り口で入場料2ドルを支払い中に入ります。中に入ると塔に続く道にたくさんの彫像が並んでいます。19世紀の初めにこのエクアドルで赤道の測量をした学者の人たちのようです。一番手前の人がエクアドルの学者で、それ以外はたぶんフランスの学者だったと思います。
博物館の敷地は円形をしており、この学者達の道の左側にフランス、スペインのパビリオン、昆虫館、プラネタリウム館などがあります。右側はレストラン、カフェ、民芸店がたくさん並んでいます。
円形の敷地の中央にそびえる塔には登ることができます。内部には民族学に関する展示品がたくさん陳列されています。
黄色のラインが赤道です。
この塔の4つの面は東西南北を向いており、赤道のラインも引かれています。実際の正確な赤道はこのラインよりも200mほど北にあります。それはもう一つの博物館の方でご紹介します。
この塔の前でポーズをとり、塔の上の地球を持ち上げているような写真を撮っている人たちがたくさんいました。
塔の内部に入るには、入場料を3ドル支払います。中に入るとエレベータで一気に屋上まで行きます。屋上からの景色はなかなか素晴らしいです。この施設が円形であることを登って初めて知りました。
塔の上から正面玄関の方向の景色です。
赤道のラインです。
屋上から見学が終わると階段で下におります。内部は5階くらいに分かれていて、エクアドルのさまざまな民族の歴史や生活を知ることができます。しかし、民族学に興味のない人は、さっさと降りてしまった方が時間の節約になります。
この博物館の敷地は良く整備されていて、気持ちの良い所です。この日は快晴で、紫外線が強いため、ドライバーが日焼け止めクリームをくれました。皮膚癌の発生率が非常に高いのだそうです。
正面玄関から見て左手にあるパビリオンを駆け足で見て回りましたが、あまり面白いものはなかったです。昔の測量器具の展示コーナーだけは気に入りましたが。
インティニャン博物館:Museo Intiñan
民族学博物館に隣接しているのがインティニャン博物館です。隣接しているといってもどちらも広大な敷地を持っているので、双方の博物館の中心部分の距離は200m位離れています。
このインティニャン博物館はとても興味深い所で、正確な赤道はこの博物館を通っており、「赤道マジック」とネコ師が名付けた興味深い物理現象を見ることができます。
アルパカ
入り口を入ると・・・・、「あっ、アルパカ!」。やっと身近で見ることができました。可愛いです。
赤道マジック
奥の方に行くと、正確な赤道のラインを引いている所にたどり着きます。「今度こそ、本当の赤道だ!」と喜んで写真を撮っていると、この博物館のガイドが近づいてきて、説明してくれました。そして、赤道ならではのいろいろ面白い現象を実演してくれます。
GPSで計測した赤道のラインです。
お待たせしました。「赤道マジック」をご紹介します。
① 水流の変化
ご存じの方もいると思いますが、洗面台に溜まった水は、排水する時に北半球では反時計回りの渦を描きます。南半球では反対に、時計回りの渦を描きながら排水されます。では、赤道上ではどうでしょう? そうなのです。まったく渦を描かずに排水されます。
ガイドが実演して見せてくれます。まず、赤道上に設置した台所の流し台の排水溝のゴム蓋を外すと全く渦を描かずに排水されました。
次に、流し台を赤道ラインから2メートルほど南に移動して同じ実験をすると、確かに時計回りに渦を描いて排水されています。今度は赤道ラインから北側に2メートル離れた場所で同じ実験をすると反時計回りに排水されます。
これには本当にびっくりしました。なぜびっくりしたか分かりますか?
地球の赤道半径は 6,378.137 kmです。円周は40,073kmもあります。このスケールで見れば、赤道から2メートル離れたとしても、極端な物理現象の違いが起きる筈がない! というのがネコ師の考えでした。今もそう思っています。たとえば、水が渦を巻かずに排水される場所は、赤道上のもっと幅のあるものだと考えていました。その幅は、数キロから数十キロていどあるのではないかと考えていました。しかし、ここで見た現象は、赤道を挟みわずか2メートルのところで起きました。
まったく不思議です。だから赤道マジックと勝手に名前を付けました。
② 赤道上での力の減少
ガイドが次に見せてくれたのが赤道上での「力の減少」実験。
まず、赤道より2メートル南で、ガイドが客に指を組んで腕を上方に伸ばした姿勢をとるように頼みます。足は開き踏ん張れるようにします。ガイドはこの腕を下に向けて引き下げようと力を加えます。押し下げるにはかなりの力が必要です。
次に、赤道上で同じ動作をします。すると不思議なことに簡単に腕を引き下げることができました。ガイドは、「次は皆さんでやってみて下さい」といいます。やってみると確かに赤道上では簡単に引き下げることができます。相手側は、赤道上では力が入らないと言います。
次の実験は、親指と人差し指で輪を作り、別の人が指でこの輪を広げようとするもの。これも同様に赤道上では簡単に指が開いてしまいます。
ガイドの説明では、赤道上では力を失ってしまうという現象が起きるのだそうです。
③ 卵の直立
最後に、板に打ち込まれた釘の頭に生卵を立てる実験。
この釘の頭の部分はほんの少し傾いているので、この上に卵を立てるといっても、釘と卵の接点は「点」になります。それが比較的簡単にできるという実験です。
私の同行者4名は皆、立てることができましたが、疑い深いネコ師は邪念が邪魔をして立てることができませんでした。これを立てることができると証明書をもらうことができます。
この3つの実験はとても面白く楽しめました。しかし、ネコ師の考える「赤道には幅があるはずだ」という疑問は解決しないままです。
そこでガイドに正確な赤道をどうやって測ったのか聞いてみました。ネコ師のGPSでは南緯00 °03分を指していたのでその違いも聞いてみました。
ガイドの説明によれば、カナダの軍事GPS 南米システム 69 (GPS Militar Canada, Sistema América del Sur 69)を使った測定によるもので、商用ベースのものは GPS Comercial 79 というシステムを使っているので2~3分の誤差が出るのだそうです。
ネコ師の疑問は、真円ではない地球を測地する座標系の決め方には物理の世界ではなく人間が決めた部分が入っているので、赤道を挟んでわずか2メートルのところで明らかな差が見られるはずがない、というものです。GPSが示す赤道とは人間が決めたもので物理の世界とは別のレベルのものだということです。だから、こんなことが起きるのはマジックだ、というのがネコ師の結論です。要は、「わかりましぇーん」ということです。
ここで実験を見ていると、入場料回収人が回ってくるので、その場で入場料3ドルを支払います。
ポケットサイズの人間の生首製造法
この博物館の中には様々な展示もあるのですが、最も興味を引いたのが、「人間の生首をポケットサイズに縮小する方法」。以前テレビで、アマゾンにはそんなことをする原住民がいるというのを見たことがあったのですが、それがエクアドル領のアマゾン地帯の原住民だったことを初めて知りました。
この部族はアウカ族(Auca)というそうです。
では、携帯に便利なポケットサイズの人間の生首の作り方をご紹介します。実際は生首ではなく、乾燥首ですが。
① 敵の戦士を殺します。
② 戦士の肩から胸の部分の皮をつけたまま、頭部を切断します。
③ 切断した頭部の頭蓋骨を取り除きます。鼻の骨だけはそのまま残します。残っている中身を全て取り除きます。そして良く洗います。
④ 処理した頭部を熱湯でぐつぐつ煮込みます。余分な脂質を取り除くのだと思います。
⑤ よく煮込んだら後は、良く乾かします。
⑥ 赤く熱した石をこの頭部に入れ、残っている不純物を燃やします。
⑦ 口を縫い合わせ、髪の毛を結い、完成です。
下の写真が完成品の本物です。大きさは野球のボールくらいです。
敵の勇者の頭を携帯に便利なように縮小して持ち歩いたのでしょう。勇者の力をいつでも借りられるように。まるでTVゲームの設定に出てくるような感じです。
この博物館はこぢんまりとしていて、感じがよく気に入りました。
次回は、世界遺産古都キトをご紹介します。