今日は、スクレから車で40分ほどのところにあるハトゥン・ヤンパラという集落に『観光客』として行ってきました。
ホテルのフロントで、スクレの近郊でお勧めの観光スポットは?と聞いて紹介されたのが、この集落訪問ツアー。
フロントで旅行社に申し込み、すぐ出かけることに。実は、ツアーの中身をほとんど知らないのに、予約するという場当たり的な決定です。どこに行くのかも知らないという相変わらずいい加減なネコ師です。
ホテルで待っているとガイドが迎えに来ました。早速、出発です。専用ガイドに運転手付専用車を使った個人ツアーです。
スクレ市内を出て、毎週日曜市が開催される有名なタラブコ村方向に車を走らせ、30分ほど行ったところを脇道に入り、10分ほど行くと、目指すハトゥン・ヤンパラ(Jatun Yampara)集落に着きます。この道で、同じ旅行社の別の車とすれ違いました。後で聞いたら、カナダ人旅行者2名を集落に案内した帰りだとか。
せっかく専用ガイドがいるので、今日は「質問魔」と化したネコ師です。
先ず、集落の名前の意味を聞いてみます。Jatunとは、ケチュア語で「大きい」という意味で、Yamparaは「風」という意味だそうです。つまり、風の強い所という意味です。この地域は風が強く、6月から8月にかけて強風が吹くのだそうです。
農家の家を見学
最初に、農家の家を見せてもらいます。旅行会社から連絡が行っているらしく、農家の人が愛想良く案内してくれます。農家の人の目には、観光客は「歩くドル箱」のように写っているようで、とても親切でした。
実は、このような家は見慣れているので、あまり関心がないのですが、一応、写真を撮ります。台所です。
畑
丘を一つ越えて、別の集落にいきます。きれいな光景が広がってきました。
畑の中を通るとき、トウモロコシを見かけたので、トウモロコシ(Maíz)だと言ったら、ガイドがChocloだと言います。???。 そういえば、レストランでもChocloと言う言葉を良く聞きます。辞書をほとんど使わないネコ師には、この違いが分からないまま、ずっと過ごしてきました(汗)。今日は、お客様なので、ガイドに遠慮なく聞きまくります。
Choclo(チョクロ)は生トウモロコシのことで、Maíz(マイース)は乾燥させてカチカチになったものを言うそうです。知らなかった(汗、汗)。そういえば、レストランで出てくる茹でトウモロコシのことを皆がChocloと言っていたなぁ、と改めて思い出しました。
いつもこのような光景だと思ったら大間違い。この地域の年間降水量は400mm程度なので、この時期以外の年間の大部分は、一切、緑が見えないはげ山状態です。
チチャを飲む
集落のバー? のようなところに連れて行かれ、チチャをごちそうになります。このチチャは、良く発酵しているので、胃がデリケートなネコ師でも飲むことができました。
チチャは、トウモロコシの粉を上の写真の瓶の中に入れ、2、3ヵ月かけて発酵させるそうです。瓶のふたは、トウモロコシの芯を束ねたものを使います(下の写真)。
杯に入れたチチャを飲む前に少し床にこぼします。大地の神パチャママに捧げるのだそうです。
Wikiの説明ではパチャママの意味は、ケチュア、アイマラ共に共通した「母なる大地」だそうです。豊穣を司る大地の神であり、全てのものの母親とされているそうです。ほんとうにそうかな?
パチャママの「ママ」は、ケチュア語で、やはり「母」という意味だそうです。それじゃぁ、「パチャパパ」はいないのか聞いてみたら、皆爆笑していました。そんな神はいないそうです。
ついでに、現地のたばこを一服いただきます。
宿泊施設を見学
この集落は、観光客が宿泊できます。私は泊まりたいとは思いませんが。なかには物好きな人がいて泊まるのでしょう。暖炉とバス・トイレ付きです。人生に疲れたら、ここに長期滞在するというのも一つの方法かも。再び社会復帰できるかどうかは知りませんが。
この集落には水がないのですが、この宿泊施設の水は、小川からポンプでくみ上げているのだそうです。
「投てき具」を使う
石をヒモを使って遠くまで投げる「投てき具」の実演を見せてもらいました。テレビで見たことがありますが、実物は初めて。
これを何に使うのかというと、遠くに行ってしまったリャマをこちらに呼び寄せるのに使うそうです。これを使って、リャマのいる近くに石を投げると、リャマが戻ってくるそうです。農家の人に直接聞いたのでなければ、信じられない話です。
ネコ師も試しにやってみました。ヒモの輪になっているところを小指に通し、石をセットして、ブンブン振り回し、もう一方の端を離すと、石が遠心力で遠くまで飛んでいくという、単純ながらも、優れものの道具です。
パチャママの祠(ほこら)
パチャママは大地の女神で、ボリビアでは土着の神として信仰されています。教会には、イエス・キリストとパチャママが祭られています。
異端に厳しかったフランシスコ会も、スクレではパチャママ信仰を完全に取り除くのに失敗したようです。
新しい集落をつくるとき、祈祷師がパチャママの宿る石を探し、それに生け贄のリャマの血を捧げ、祠を造り安置します。以降、この石は、集落を災いから守る信仰の対象となり、大切に扱われます。
なんと、小さな吊り橋まであります。
リャマの子どもを思いっきり撫でる
リャマだぁ! ウユニでは、近づくのがやっとで、触ることができなかったリャマですが、今回は触りまくります(ムフフ)。
農家の人に、子どものリャマを捕まえるようにお願いします。子リャマは逃げ回っていましたが、あえなく御用となります。
ネコ師の手が、可愛いリャマの子どもを触りまくります。
うっうっうっ。 この時を夢見ていました
リャマがいやがっている? それは気のせいです。
写真のリャマの子どもは、3月3日に生まれたばかりの赤ちゃんリャマです。毛がふわふわで柔らかく、顔が妙に小さい感じがします。とくに口元が。
とにかくカワイイです。写真を撮りまくります。足も「こんなになっているんだぁ」と、感動です。足の裏側と表側の写真です。小さくてカワイイです。
とにかくカワイイです! この円らな瞳をご覧ください!
連れ帰って、うちのペットにしたいです~。
リャマも猫も同じ動物なので? 猫が喜ぶような撫で方でリャマも撫でます。結構、気持ちよさそうにしています。
頭も耳もあごも首も、とにかく触りまくりました。こんな機会はもうないかも。カワイイです~。
スクレの近くではまずリャマを見かけることはありません。今回が初めてです。
このリャマは、最初、2頭だったのが7年かけて、いまでは15頭に増えたそうです。雄は1頭だけで、残りは雌か去勢した雄。なぜ雄が1頭だけかというと、2頭以上雄がいると喧嘩したり、どこかに行ってしまうからだそうです。
リャマたちは餌の牧草を求め、遠くの方まで行ってしまいますが、飼い主が口笛を吹くと戻ってくるのだそうです。犬じゃあるまいし、人になつかないリャマが人間のいうことをきくので、どうやって訓練するのか、ずっと不思議に思っていました。
種明かしはこうです。
冬の間は、このあたりの草は全て枯れ、はげ山状態になります。当然、リャマが食べる牧草も全くありません。農家は、小麦を収穫した後の茎の部分を家畜の飼料として保存しています。この飼料を口笛を吹いて条件付けしてリャマに与えることで、飼い慣らすことができるようです。
これも、農家の人から直接聞かない限り、信じられないことでした。「へぇー」って感じです。
食堂
比較的大きな食堂です。なかなかいい雰囲気でした。
陶器づくり
現地にある材料を使って陶器を作っています。
この集落の観光開発は、今回利用した旅行社『Agencia de Turismo Sucre』が独自に行ったものだそうです。宿泊施設や、リャマ、陶器作り、織物、楽器の展示など、観光ツアーの旅行者を飽きさせない工夫がされています。
この陶器は、この集落で出土したものを参考に作られています。ボリビアの中でも陶器のデザインは異なっており、この集落独自のデザインがあります。
ガラスケースの中に入っている陶器がここで出土したものだそうです。旅行会社の人が見つけました。
この地域の粘土は、まるで石のようになっています。見かけは細かい石の破片のようですが、この石臼?でゴリゴリとこすると、粉々になって粘土粉になります。
これが陶器を焼く窯です。焼き方があまりに簡単なので驚きました。
先ず、この窯全体を焼くため、下から薪を焚きます。1時間くらいだそうです。釜が十分に焼けたら、粘土で作った素材を中に入れ、窯にふたをして一昼夜待つだけ。何となく蒸し焼きという言葉がピッタリです。伏せ焼きでしたっけ?、この焼き方。
陶器作りは、何日も火を焚くというイメージだったのでこの簡単な方法には驚きました。日本の古代の土器もこんな感じで焼いたのではないかと思います。
この地域は、写真を見て分かるように、ほとんど木がありません。つまり、薪が貴重だということです。薪を採るために遠くまで出かけなければなりません。少ない薪で、土器を焼き上げる工夫に感動したネコ師です。
ちなみに、上の説明では、陶器、土器などの用語をいい加減に使っていますが、焼成温度により使い分けがあるようです。磁器は最も焼成温度が高いもののようですが、良く知りません。
機織り
リャマから刈り取った毛を自然顔料で染色し、紡いで毛糸を作り、簡単な機織り機で織物を作ります。これら全てが、現地にある材料で行われており、少し感動しました。
この糸を紡いでいるおばあさんが絵になるので、たくさん写真を撮らせていただきました!
リャマから刈り取った毛は、色別に分けられます。白い毛が自然の顔料で染められます。染色顔料は、鉱物由来のものと植物由来のものに分かれます。ここでは、植物からのものが多いようです。
民族衣装
集落毎に独自のデザインがあります。素人目にはどれも似ていますが、彼らから見れば全然違うようです。
衣装には、お祭り用、普段着用、葬儀用などそれぞれTPOに応じてデザインが異なります。お祭り用の衣装は、たくさんの色を使います。普段着用は、色の数を減らします。葬儀用は黒を主体とした色調にします。服だけでなく、帽子もそれぞれの場面で異なるデザインのものが使われます。
既婚者と未婚者でもデザインが違います。お祭り用の衣装では、女性の帽子の場合、帽子の上に飾りがないのが未婚者用です。
下の写真は、帽子の上に飾りがあるので既婚者です。この帽子をかぶった女性を口説いてはいけません(笑)。
男性の場合も、帽子の縁に飾りのないのが未婚者用です。
下の写真では、縁に飾りがあるので、既婚者です。この帽子をかぶった人は、未婚者の女性を口説いてはいけません(笑)。
男女が出会う絶好の機会のお祭りで、既婚か未婚かすぐに見分けられるところが、優れものです。後のトラブルが減ります(汗)。
写真ではアップしませんが、この他に楽器コーナーがあります。
面白いと思ったのは、季節により使う楽器が違うということです。
南米アンデス地方の民族音楽フォルクローレに使われる笛の一種であるサンポーニャは、その音色が示すように、風の強い冬の時期に使われます。夏の時期は、陽気な太鼓やウクレレに似たチャランゴが使われます。
音楽は、現地の文化をそのまま映し出しているように感じています。季節によって使う楽器が異なるというのも、また、文化なのかなぁと感じました。
ツアーの評価
このツアーの料金は、ガイド、運転手付専用車両がついて40ドルです。これを高いと見るかそれなりと見るかは意見が分かれるところですが、個人的には満足しています。
団体ツアーではなく、個人ツアーのため、ガイドを独り占めでき、聞きたいことを好きなだけ聞くことができます。聞き取れなかったり、知らない単語が出てきたりしたら聞き直すことができます。さらに、なんと言っても、リャマの子どもを思いっきり撫でることができたのが収穫でした。こんな豪華ツアーは探してもありません! 本当はアルパカの方が良かったのですが、アルパカは難しいようです。既に絶滅危惧種です。
ボリビアの中でもこういう手作りの暖かい感じのするツアーって、そうそうないと思います。あるとしても、観光ズレした集落に連れて行かれ、がっかりするのではないかと思いますが、このツアーは違うなぁと感じました。このツアーは、この旅行社だけの特別企画だそうです。
スクレには42の旅行社があり、そのうち大きなものは3つ。この旅行社はその中の一つで、うちのホテルが一押しの旅行社です。
ネコ師は、いつもは別の旅行社を使うのですが、この旅行社も気に入りました。